新人スタッフが会社に入ってくると、密かに期待することがあります。
それは、企画会議における「聞いたことも、見たこともない斬新な」アイディアです。
実のところ、この仕事を長くやっていると、前回書いた「約450」の、「在り物(既成)のイベント」を、つい目の前の「仕事」に当てはめて考える習慣、が身についてしまっているのです。もちろんそれが、経験によるところの「引き出し」ではあるのですが。
その新人が、109(渋谷)の、バレンタインデーのイベントアイディア会議で、次のようなプランを披露しました。
・新人「『恋のジャンボスロットルマシン』というのは、どうでしょう?」
・先輩「面白そうだな。どんなの?」
・新人「109店頭のステージに張りぼての『ジャンボスロットルマシン』を作り、すぐ横の階段に、2階からスベリ台を設置します」
・先輩「うん、それで」
・新人「並んだ男性が、順番にスロットを引きます。アタリが出ると、スベリ台から水着の女の子が次々とスベリ降りてきて・・・」
・先輩「面白い!それで?」
・新人「アタリを出した男性にキスをして、走り去ります!」
・先輩「いいねえ・・・でも、だめだな!」
・新人「どうしてですか!?」
○仕込みができない、または難しいからです。
冬の最中に、水着で、仕事とは云え、見も知らぬ男にキスをする娘がいると思う?テレビに出られる訳でもないのに。
○仕込めたとしても、予算オーバーしそうだから、というのもあります。
お金を掛けてそんな女の子を仕込んだとしても、意味ないじゃん!
○第一、趣旨とは逆ではないか。バレンタインなら、スロットを引くのは女性で、スベリ台からスベリ降りてくるのは、彼女の恋人でなくちゃおかしい・・・
先輩社員から、いろいろと「いちゃもん」を付けられて、この企画は残念ながら「ボツ」となりました。
決まったイベントは、『街に響け!愛よ、とどけ!』といったタイトルの、大声マシーンを使った「女性による告白・大声コンテスト」でした。
テレビニュースのネタとして取り上げられ、イベントとしては大成功。
「○○ホーン」の騒音を出した、1等賞の女性は、カップルでの海外旅行をGETし、めでたし、めでたし。
「仕込み」の出来ないイベントプランは、「絵に描いた餅」です。
NASAの月の石を、スーパーの店頭に飾ることは出来ません。
109店頭でのイベントで、小泉首相に審査委員長になってもらうことは、どんなに面白い企画でも、不可能です。
しかし私は、『恋のジャンボスロットルマシン』は、想像すればするほど面白い、捨てがたい企画だと、今でも思っています。「いつか・違うシーンで・状況が許せば」、ぜひ提案したい企画です。