46.イベント・トンネルウォーク

「トンネルウォーク」と聞いて、何のことだと想像されますか?
“日本一長いトンネルを歩くイベント”ではありません!私が仕事として体験したのは、地下鉄の構内を3駅間歩くというイベントでした。
 

さてそのイベントについてお話する前に、気になったので“日本一長いトンネル”はどこかについて調べてみました。確か小学校で習ったはず。
『丹那(たんな)トンネル?』だったかな・・・WEBで調べてみました。
 

正解は「青函トンネル」。しかも「世界一」で、全長は53.85kmもありました。丹那(たんな)トンネルは全長7,807m。圧倒的な差です。
私の小学生の頃の記憶は、新聞やテレビで見ただろうに、修正されず止まったままでした。・・・こんなこと、他にもあるんだろうな・・・コワイな。
 

 *           *            *
 

旧「帝都高速度交通営団地下鉄」、現「東京メトロ」の「南北線」は、まず1991年11月末に駒込駅~赤羽岩淵駅間が開業しました。
開業に先立ち、営団地下鉄ではファミリーを対象とした「開業記念イベント」として、「トンネルウォーク」の実施を決めました。
 

まだ電車が走る前の地下鉄トンネル内を歩くという「トンネルウォーク」。
私の会社は、鉄道広告に強い中堅広告代理店から、このイベントの運営実施を任されました。
 

何度か代理店に連れられて、営団地下鉄との打ち合わせに出席しました。
なかなか緊張感のあるピリピリした会議でした。その訳は、営団も広告代理店も、実は私の会社も、一度も「トンネルウォーク」というイベントを実施したことがないということに起因していました。
 

「大丈夫ですよ!」と、代理店も我々運営サイドも、営団の担当者に盛んに“空手形”を振りまいたのですが、なかなか納得してもらえません。
それもその筈で、車道のトンネルを歩くのとは違って、地下鉄のトンネル内には、線路・枕木はもちろんですが、関係者以外が歩くことを想定していないため、ATSを始めとする精密機器が、案外無造作に、至る所に設置されているからでした。
 

薄暗いトンネル内で、子供を多く含むファミリーに、「踏むな!」「触るな!」「蹴っちゃダメ!」というのは、土台無理な話。担当者が危ぶむのも無理はありません。いつ担当者の口から、「やっぱり中止!」という言葉が飛び出すか、スタッフとしてはヒヤヒヤものでした。
 

 *           *            *
 

イベントは夏休みに実施すること、実施区間は「王子神谷~駒込」間と決定しました。途中「王子」「西ヶ原」と二駅あり、距離にして4Km弱。終点(始点)の「赤羽岩淵」からでないのは、「王子神谷」のすぐそばの車両基地があり、ここの見学もイベントのコースに入れられたからです。そして、60組約200人のファミリーが抽選で招待されることが決まりました。
 

企画にあたって一番の注意点は当然「安全」です。
次に、どのようにしてトンネル内を200人の見学者に見ていただくか、という点に会議の議論が集中しました。
 

方法論として、一番アナログな方法が決定しました。
 

1.200人を10組に分け、各組に「アナウンサー」を付ける
・・・ファミリーといっても、父(母)と子供ひとりというペア参加もあれば、一家5人(お年寄り含む)という家族もありました。名簿に基づき、振り分けました。
 

2.「アナウンサー」は女性MC
・・・我々イベント業界では、アナウンスのための人材はMCしか思いつきません。ガッツがあって、ギャランティの比較的安い女性MCを10人入れました。
 

3.PAは、肩掛け式のスピーカーBOXのついた「トラメガ」
・・・このトランジスターメガフォンをMCは担ぎ、事前に決められたコメントを喋ります。~機器の説明や注意点。地下鉄Q&A
 

※機器を壊されるのではないかという危惧は、杞憂に終わりました。暗い中を歩くというのは、案外緊張するものです。MCのの諸注意は、子供たちも素直に聞いてくれました。
 

4.各組の編成は次の通りです
・先導としてトランシーバを持ったスタッフ
・組の先頭は営団の職員
・MC
・1組約20名の招待客
・最後尾に、救急用品やその他備品を持ったアルバイトスタッフ
 

5.参加者全員、ヘルメットと懐中電灯を装備
・・・「懐中電灯」はラジオ付で、参加者にそのままプレゼントされました。
 

※各組の間隔は約50m以上取りました。肝試し、またはお化け屋敷を歩かせるのと同じで、なかなか効果的でした。
 

実は企画進行中に下見のため、3回この区間を歩いたのですが、前記の通り、決して歩きやすい道ではないので、2時間近くかかりました。確か1回目の下見は真冬で、重ね着しても胴震いが止まらなかったを覚えています。
 

     ◇         ◇         ◇
 

夏休みの日曜日「トンネルウォーク」は開催されました。実施当日はあいにくの大雨。ただし地下を歩くので関係なし。私の受け持ちは、幸せなことに途中駅のホームでの待機でした。途中駅では、トイレ休憩と、弁当、飲み物が振舞われます。
 

トランシーバから、先頭のグループの到着間近が知らされました。私はホームの端に迎えに出ました。そこで私の見た光景は・・・
 

≪日頃スーツを着用し、ヒールの高い靴を履き、颯爽とコメントを話すMCの、見たことのない姿でした。≫
 

≪Tシャツにパンツ姿、ヘルメットを被り、べた靴であるスニーカーを履いて、顔に薄っすらと汗をかいた雄姿です!≫
 

次々と到着する、ついぞ見たことのないMCのその格好に大笑いしながら、実はちょっと感動していました。「同じスタッフなんだなあ」と親近感から、グッとくるものがありましたよ。