41.舞台監督というお仕事

「舞台監督」という職業があります。
通常「ブカン」とか「ブタカン」と呼ばれています。演劇や、コンサートの舞台稽古やリハーサルの際、演出家の意向に沿って、裏方(音響、照明、大道具、衣装、メイク等)をまとめる役目です。
 

その助手のことを「スケブタ」といいます。正しくは「舞台監督助手」。
しかしミュージシャン風というか、業界風に「隠語読み」すると「スケブタ」となります。
現場では「おーい、スケブタ!タバコ買ってきてくれ」とか、「俺はコーラと肉まん!」という具合に、スタッフからいいように、コキ使われます。
 

学生時代、私は演劇サークルに所属していました。入部してすぐの公演で、私は「役者でも裏方でもない」舞台監督助手をやることになりました。
芝居とは関係のない雑用係としているのもシャクでしたが、それよりなにより「スケブタ」と呼ばれることがたまらなく嫌でした。
「スケベな豚」みたいで・・・二重三重に屈辱的に感じたものです。
 

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演劇における「舞台監督」と、映画における「監督」とは全然違います。
演劇の世界では、「演出家」が一番上です。映画界に「世界のクロサワ(黒澤明)」がいるように、演劇では「世界のニナガワ(蜷川幸雄)」がいます。
先に書いた通り、舞台監督はあくまで演出家の下にいて、裏方のアンサンブルが旨くいくよう、コンダクターとして働きます。
 

まあ、極めて地味な仕事ではあるのですが、では「舞台監督」になるのには、どうすればよいか?
資質としては、裏方の仕事を理解し、仕事内容を十分に知っていなければ務まりません。それと、取りまとめ役なので「調整能力」。さらに裏方の「長」に当たるわけですから「親分気質」も必要でしょう。
 

通常、舞台監督助手を数年経験してからなるか、音響や照明のチーフを経て、皆に推されてなる、といったケースが多いようです。経験的に云うと、礼儀正しく、愛想がよくて、小さなことにコセコセしない人が大成します。
「ブカン」とは、どんなに時間が差し迫っていても、「言葉をゆっくりしゃべる人」というイメージも、私にはあります。
 

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さて、イベントの現場でも「舞台監督」を入れることがあります。
ファッションショーなど劇場を使う場合や、大きな展示会などの仕事の時です。
音響や照明、特殊効果(特効)を必要とする時や、装置や大道具を組み立てる必要のある場合も、「舞台監督登場」となります。
 

云わば、イベントスタッフという「裏方の一員」として、「この仕事には舞台監督が必要だ」となる訳です。黒沢明の『用心棒』で、ヤクザが三船敏郎扮する「先生!」を雇い入れるようなもの、とはちょっと違うかな?