33.パラオからのお客様(2)

ふたりのパラオ人(セイイチさんと、タルマウさん)を、名古屋から東京の町田に連れてきたことは、前回お話しました。道中、「ビンロウジュ」事件があり、ハラハラどきどきの2時間半でした。
 

さて今回は、その続きです。
 

 *           *            *
 

私は所属する会社の同僚とふたり、引き続き百貨店での「パラオイベント」に付くよう命じられました。同僚は、英語のできる女性社員(K嬢)でした。
 

仕事内容はイベントの管理はもちろんですが、パラウ共和国からの「お客様」のお世話も任されました。
町田でのイベント期間は2週間。名古屋のものより規模が大きかったため、4人新たにバラオから招き、成田空港にK嬢が迎えに行きました。
 

イベント内容は、物産と観光展。実演として、店頭での「踊り」の披露と、パイナップルの葉や茎を使った「カゴ」の製作がありました。
 

新たに加わった4人は、物産展会場に詰めるとともに、踊りにも参加します。セイイチさんとタルマウさんは、名古屋と同じく「カゴ作り」の他に「踊り」にも加わりました。
 

私とK嬢の一日は、朝9時に6人が宿泊しているホテルのフロントでのピックアップから始まります。それ以降は、
 

○10時から5時までイベントの運営管理
○パラオの人の要望を百貨店の担当者に伝え、うまく処理すること
○休憩時間のショッピングのお付き合い
○終了後の夕食の同伴、その後の酒席の付き合い
○21時過ぎ、やっとホテルへ送り届けて、お仕舞い、です。
 

さらに期間中に百貨店の定休日が挟まっていたので、この日は「ディズニーランド」観光をしました。さらにさらに、今ではどの日にどう都合したのか忘れてしまいましたが、東京観光で「はとバス」に乗ったはずです。「東京タワー」を、確かパラオ人と一緒に見上げた覚えがあります。
 

     ◇         ◇         ◇
 

1週間を過ぎた頃、タルマウさんがホームシックにかかりました。うつろな目をして、言葉も少なくなり、時々涙ぐんでいる様子。観光でなく仕事。しかも、どういう経緯で日本に「連れてこられた」のかは知りませんが、名古屋を含めると結構な長期滞在です。「無理もないか・・・」
 

○百貨店担当者「なんとかしてやれよ。ドライブに誘うとかさあ・・・」
 

「俺が、なの?!」と思い迷いながら、なんとかせねばと、夕食の後、タルマウさんをドライブに誘いました。仕事を通じて、親しくなってはいましたが、彼女にとって私は英語もろくに話せない外国人。断られるだろうな、と思いながらも、立場上トライしました。
 

「OK!」の返事。
以外でした。「ナニ、考えているのだろう。ヤケになってるんじゃない?」でも誘ったのは私。覚悟を決めて、とりあえずふたりして車に乗り込み、当てのないドライブに出発しました。
 

「どこに行こうか?」その時、私はひらめきました。「家に連れて行こう」オイオイ!・・・いや、そうではありません!家には妻と3歳の娘がいます。そのことをタルマウさんに何とか告げ、車で30分ほどの我が家に向いました。
 

携帯電話はまだない時代。思いつきの行動を、事前に家に連絡する術はありませんでした。チャイムを鳴らし、妻がドアを開いたときの顔は、今でも忘れられません。ニッコリ笑ったタルマウさんの顔は、目と歯だけが暗い中にフンワリと浮かんでいた
はずです。
 

妻も英語は大してできないものの、そこはホレ、女同士。リビングのテーブルをはさんで、妻とタルマウさんの会話は、なぜか、弾んだものになりました。妻の周りにまとわりつく娘にも、タルマウさんは優しい笑顔を見せていました。
 

あとで妻から聞いた話。タルマウさんにも同じ年頃の娘さんがいるとか。そうだったのかと納得しました。
帰り際、女同士でバッグの物々交換をし、今度は4人、車に乗り込みました。タルマウさんをホテルに送り届けるためです。
 

「バイバイ!」と娘も手をふり、ロビーで別れました。「楽しかったね!」「国際親善したね!」と帰り道、興奮を交えながら、妻と話し合いました。
 

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翌日からのタルマウさんは、見事「復活」しました。
 

そして最終日、すべての仕事が終わり、「さよならパーティー」の席で、私はタルマウさんから告げたれたのです。
 

「ぜひパラオに来てください。島をひとつプレゼントします!」
 

     ◇         ◇         ◇
 

ちなみに、このイベントで、パラオ人からの「人生相談」を含め、通訳以上の仕事をこなした「K嬢」は、パラオでは沿岸警備隊の隊長をしているという「ナイスガイ」から、「パラオに来たら、海ガメに乗せてあげる」という約束を取り付けていました。(ちょっと、私が勝ったかな?)