32.パラオからのお客様(1)

パラオがどこにあるのか、地図の上で指差すことなどできません。グアムから飛行機を乗り継いで行くところ。海がとてつもなくキレイで、ダイバーにとって、最後の残された“聖地”だということぐらいしか知りません。
 

ただ、パラオのどこかに、「私の島」があります!
20年ほど前、パラオから仕事のために来日していた女性からもらったものです。
 

「パラオに来てください。島をひとつプレゼントします!」って云われて。
 

アレっ?そういや、まだ受け取ってはいないんだな。あれ以来、パラオには、一度も行っていないのだから。
 

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パラウ共和国に、リゾートホテルを持つ電鉄系の百貨店で、「パラオ・フェア」といった「物産と観光展」が開催されることになりました。
 

その頃私のいた会社は、コンチネンタルミクロネシア航空と、政府観光局にパイプを持っていたので、その関係からこのイベントに一枚加わることになりました。
 

といっても、その頃の私はまだ駆出しのペーペー。与えられた仕事は、名古屋からふたりのパラオ人を、東京の町田まで連れて来ることでした。
 

ふたり(男女ペア)は名古屋での仕事を終え、引き続き町田の百貨店でのイベントに出演することになっていました。仕事の内容は、パイナップルの葉っぱや茎を使ったカゴやバッグの製作実演です。
 

新幹線で名古屋駅から新横浜へ。JRの横浜線を乗り継いで「町田」まで約2時間半の小旅行。大したことはないとお思いでしょうが、実はなかなか、どうして。
 

●言葉が通じない!~相手は英語が多少しゃべれるのですが、私はと云うと「カタコト」以下。
 

●ふたりは夫婦でも、恋人でもなく、なぜか険悪なムードがありました。~あとで判ったことですが、ふたりはそれぞれ妻帯者で、名古屋にいたときに、男が女にモーションを掛け、フラれたらしいのです。
 

●パラウ共和国には電車は走っておらず、モチロン、新幹線は初めてのはず。だからそれなりに、旅を楽しんでくれるかなと思っていたら、まったくの当てはずれ。むっつりとお互い在らぬ方を見て、何ら感動した様子ナシ。
 

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その後の「ディズニーランド観光」で分かったのですが、多分にパラオの国民性によるのだと思います。いろいろなアトラクションで、一瞬はしゃいだかと思うと、見る見るうちに冷めてしまうのです。あの「スペースマウンテン」でさえ、彼らの前には形無しでした。

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●それにも増して、不可解なことがひとつありました。
 

新幹線の中でのこと。前に座っている私に見せないようにして、スーパーの袋のようなものの中から、なにか丸いものを取り出しては口に入れ、ガムを咬むように、クチャクチャやっていたのです。
 

「普通、美味しいものなら『いかがですか』と、勧めるだろうに!日本人なら」パラオ人だから、勧めないのか・・・?
 

そしていっときすると、ティッシュに「赤いツバ」といっしょに、それを吐き出していました!ニガイ顔して。
 

「それ、ナ~ニ?」と聞くこともはばかられ、「クスリ?大麻?ヤク?」といった“ヤバイ”イメージしか浮かびません。
 

新横浜の駅のホームで、「ペチャ」っと線路に赤いツバを吐いたのを見た時、私は思わず辺りをうかがいました。
 

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それは何か?正解は「ビンロウジュ」です。
ビンロウジュはヤシ科の植物で、果実の小片を石灰と混ぜ、キンマ(コショウ属)の
葉で包んで噛みます。東南アジア、太平洋諸島では、習慣化しているようです。「暑
さ」をまぎらすため、とも聞きましたが、どうなんでしょう?

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新幹線から、通勤時間の満員の横浜線へ。アメリカ人のように「はしゃぐ」かと思いきや、実に淡々としたものでした。
 

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男性の名前は「セイイチ」さん、女性は「タルマウ」さんといいました。ふたりとも私と同年代。ポリネシアンであるふたりは、かなり濃い褐色の肌をしていました。
 

「セイイチ」さんのお父さんは日本人の兵隊さん。でも父親は、戦時中にできた子供(セイイチさん)と母親を残して、終戦後日本に帰り、結婚もしているとのこと。そのことは後で知りました。実際、こうした理由で、パラオには「日本名」の人が多いのだそうです。
 

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さて、「セイイチ」さんにも後日談がありますが、私に「島をプレゼントしましょう!」と云ってくれたのは「タルマウ」さんです。
 

そのあたりの、「国境を越えた心の交流・人情の機微・人類は麺類」は、次回お話します。