29.イベントに契約書はなーい!

信じられないことかもしれませんが、イベント業界(?)には、「契約書」というものが存在しません。
大手広告代理店のD社でも、H社でも、ことイベントに関しては、発注は「原則として」すべて“口約束”です。私の経験で云うと、1件5,000万円ほどの展示会イベントを契約書なしで受注しています。
 

20年以上この仕事を続けていますが、契約書を取り交わしたことは、数えるほどしかありません。収入印紙貼って、「甲・乙つける」たびに違和感を覚えます。それは多分、信義の世界に反しているように感じるからです。
 

「契約書お願いします」とこちらから云う時は、相手に対して、なんらかの不安があるときです。相手から「契約書お願いします」と云われた時は、自分の会社の力不足を宣告されたような気になります。
 

ただ同業者間において、契約書を交わすのは普通、初取引の時だけです。2回目の取引からは(~2回目の取引をするという信頼関係ができたならば)それ以降、“口約束”で互いに受発注します。
 

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学校を出て、初めて就いた職業は「コピー機」を売る仕事でした。かばんの中にはいつも契約書が入っていました。代金を即金でもらわない限り、必ず「売買契約書」を取り交わしたものです。
 

3年務めた事務機販売会社をやめて、イベント制作会社に転職した時、最初に感じた疑問がこれでした。「どうして契約書を交わさないのだろう?」
 

そもそもイベント会社には、「契約書」なるものは常備していません。必要が生じた時、参考書を見ながらあわてて文面をひねり出し、ワープロソフトで打ち出します。「甲が自分で、乙が相手だっけ?逆だっけ?」
 

イベント会社には決まった取り扱い商品はありません。そのたびごとの「あつらえ物(オーダーメイド)」、常に仕様の異なる「1点もの」を売っています。だから、甲乙を書き入れれば済むような、文面の決まった契約書はないのです。
 

しかもイベントが終われば、お客様の手許に残るものはなにもありません。「記録」としての写真と、その場に立ち会った人々の「記憶」だけが財産です。(~ちょっとカッコいい!なんかハードボイルド!)
 

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さて、イベントに契約書がない理由は、多分に昔堅気の、「義理人情・仁侠道の世界観」に基づいているからではないかと、私は考えます。
「興行師」・「テキ屋」・「カツドウ屋」・「芝居関係」等の側につらなる職業として、「イベント屋」もあるのだと思います。