26.アメリカンスクール合唱隊

クリスマスのイベントとして、あるショッピングセンターから「アメリカンスクールの少年少女合唱隊を呼びたい」という依頼がきました。バブルの頃だったので、担当者はノリノリでこう云いました。
 

『どうしても一度やってみたいイベントなんだ。ホラ、ホッペがピンクで、金髪の子供たちがさ、ウィーン少年合唱団みたいな天使の歌声で、クリスマスソングを歌う!なっ、いいだろう。決めてくれたら“これだけ”出すからさ』と、結構いい額を提示されました。
 

さて、それからが大変。英語もできないのに、アメリカンスクールに直接電話して、何と云えばいいのだろうと考え込んでしまいました。
提示金額につられて、「当って砕けろ!」とばかりに闇雲にいくつか電話したところ、相手は「HELLO!」と最初こそ英語で出るものの、物怖じせずに日本語で通すと、コロリと日本語で応じてくれました。
 

「なんだ、日本人じゃん!」と、急に安心して出演交渉を始めると、最初はやはりお役所的な答えが返ってきました。
 

“一企業のために、それはできませーん”
 

「そのショッピングセンターは○○市にあって、△△米軍基地も近い。ここはぜひ、日米親善のために出演してほしい」と、自分の云っていることに何ら疑問を持たず、私はスラスラと日本語で交渉しました。
 

“なるほど。(そうきましたか)では、検討してみることにしましょう”と、急転直下。その後「承諾」の返事がきて、交渉はコーラスグループの世話役の「お母さん」と進めることになりました。
 

ギャラの交渉も上手くいき、案外な利益が出ることが判明。「合唱隊」の送り迎えはスクールバスで。昼食は「ハンバーガー」と、トントン拍子に決まりました。(なんて経費が安いんだ!)問題点はひとつ。おそろいの制服をどうするか、ということでした。なにせ、「ウィーン少年合唱団」ですから。
 

それも、ショッピングセンターの担当者の機転で解決しました。
『じゃあ、教会に行く時の服装で、と話してくれるかな。それで多分大丈夫だから』
 

     ◇         ◇         ◇
 

さてイベント当日、太った男の子や、チビで愛嬌のある男の子、のっぽでソバカスのある女の子や、なにやら哲学的な難しい顔つきの美人の女の子ら、20人の「アメリカン少年少女合唱団」がやって来ました。
 

男の子は白いシャツにネクタイ、女の子もなかなか清楚な服装でした。
「なるほど、教会に行く時の格好とは上手いことを言うな」と感心しました。
 

ただひとつ、「あちゃー!」と思ったことは、子供たちの20人中14,5人は、日本人顔だったことです。アジア人かもしれませんが・・・。そういえば、交渉相手の世話役の「お母さん」も日本語の上手な日本人だった!
 

「近頃はアメリカンスクールに自分の子供を通わせる日本人も多いんですよね。どうしましょう?」と私。『まあ、仕方ないか』と担当者。
 

肝心のステージはどうだったかと言うと、「アメリカン少年少女合唱団」は、多くの観客の、大きな拍手を浴びました。どこの国の子供だろうと、子供はみんな可愛らしくて、一生懸命クリスマスソングを歌う姿はとても微笑ましいものでした。