20.日本一周ふじ丸の旅(1)

スーパーの大手J社が創立20周年を記念して、商船三井の新造船「ふじ丸」を丸ごと貸切り、各地の港、港に立ち寄りながら、日本を一周するというイベントがありました。
広告代理店はA広告社。東京を出航して四日市、大阪、姫路、金沢、新潟、函館、仙台と各港に停泊しながら、9泊10日の豪華客船の旅。1988年6月のことですから、バブルの真っ最中の頃。
 

私が関係したイベントの中で、扱い金額でなく、そのスケールからいって、最大のものがこれです。私は広告代理店の下で、イベントの運営全般を担当しました。私をヘッドに、18人のスタッフがこの「クルーズ」にスタッフとして参加しました。「24時間拘束/連続10日間」の仕事でした。
 

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「ふじ丸」は、その年の4月に就航したばかりで、総トン数23,500トンで、当時日本最大の客船でした。
(現在の日本船籍最大は、日本郵船の「飛鳥」で28,717トン)
 

『海上にそびえるその姿は、あたかも大きな都市を思わせます。船内設備は、ゆったりとくつろげる快適なキャビンはもとより、贅沢な造りのラウンジやサロン、落ち着いた雰囲気のダイニングルーム、そして図書館、シアター、プール、アスレチックジム、大浴場、売店、美・理容室、診察室など都市機能のすべてを満たしています・・・』
 

当時、J社が店で配った「日本一周クルーズ」参加募集のパンフレットにはこう書いてありました。
 

そして実際に乗船してみて、これ以上の発見がいろいろありました。
 

●大浴場は、サウナ付!
 

・・・“スタッフもキャビンのシャワーでなく、大浴場に入っていいゾ!”と云ってくれたのは、商船三井の方。最初、代理店は遠慮してました。「お金を払って乗船されている方に、悪いのではないですか?」“いいんです、それで“ふじ丸にとって、皆さんスタッフの方も、お客さんなんですから”と押し切られ(本心はワクワク!)、「客船」の「しきたり」を知らない我々は、何となく納得しました。
 

実際のところ、商船三井にとっては「クルー」と「それ以外」をはっきりと分けたかったのでしょう。10日間ストレス解消に、展望風呂は最高でした!
 

●一流シェフが腕をふるうディナー
 

・・・“スタッフも食事はダイニングルームで、乗船客と同じものを”と、やはり商船三井の担当者。おかげ様で、随分と豪華な食事をいただきました。(時間は、乗船客とはズラしましたが)もうひとつ、びっくりしたのは船には夜食があることです。夜の10時にダイニングに行くと、うどんや蕎麦、サンドイッチが用意されていました。これら食事もストレス解消に大いに役立ちました。
 

●ふじ丸は、地下1階、地上8階建て
 

・・・エレベータは2ヶ所に計4基あり、メインのエレベータホールは、まるでホテルのそれのようでした。ただ、スタッフは急ぐとき、エレベータを待っていられないので、階段を使います。船は階段に限らず、ベースがすべて鉄製なので、「ビーン」と振動が足にきて、船旅の後半、ヒザが随分と痛んだのを覚えています。
 

●7つの顔を持つ女性クルー
 

・・・ある時はキリリとスーツに身を包んだ「インフォメーション係」、またある時は、可愛らしいエプロンと三角巾を頭に巻いた「お掃除隊」。ベッドメイキングも、通路や、階段の拭き掃除も彼女たちのお仕事。またまたある時は、エプロンを変えてダイニングルームの「配膳係」。そしていつの間にか、「インフォメーション係」に戻っている。明るい笑顔をけして絶やさず、まるで疲れを知らない天使のようでした。
彼女たち、「海」と「船」が本当に好きなんでしょうね!
 

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さて、いいことを沢山書いてきましたが、スタッフとしての10日間は、持てる体力の限りを絞りつくすものでした。それにも関わらず、一番想い出に残る現場だと今でも思えるのは、やはり「海」と「船」がそこにあったからでしょう。
 

一生のうち、もう一度、今度は「クルージング客」として、ぜひとも客船に乗りたいものだと考えています。
「船旅は高い?!」それは当然です!!
豪華客船は、「乗り物」+「ホテル」+「高級レストラン」+「アスレチック」+「劇場」(流れる自然のパノラマを背景に、そこに集う人々が織り成すドラマ)だからです。
 

次回は、「スタッフとしていかに10日間戦ったか」について書きます。