19.宝飾フェア(3)

『宝飾フェア』は、開催地における「一流」といわれるホテルの大宴会場で、3日間開催されていました。会場には次の5者が、それぞれの思惑を抱いて集合していました。
 

●主催者であるメーカーの人(マネージャー)数人・・・『目標達成!1億円!』
 

●宝石と洋服を売るための販売員10数名~メーカーとは関係のない“流れ(!)”の派遣販売員・・・『たくさん売って、歩合を稼ごう!』
 

●その地域におけるメーカーの訪問販売員(たぶん契約社員)多数~自分のお客さんを連れて、入れ違いにやってくる・・・『たくさん売って、成績上げよう!』
 

●招待客(着飾った熟年女性)~訪問販売員に連れられて、または待ち合わせして来場・・・『一流ホテルってどんなとこ?買うつもりはないけど』
 

●われわれ~ファッションショーのステージ関係者6名・・・『早く終わらせて、美味しいモノ食べよう!』
 

私は会場内のショーケースから、ファッションショーで使う宝石をショーのたびごとに集める仕事も受け持っていました。そこでよく耳にした会話は、次のようなものでした。
 

販売員「今まで苦労してきたんだもの。自分ヘのご褒美だと思って買っちゃいなさいよ」
招待客「でもねえ・・・」
販売員「お金は旦那さんがにぎっているの?」
招待客「いいえ、わたしだけど」
販売員「じゃあ、どうとでもなるじゃない。めったにないいい機会だし、買ったら」
招待客「そうねえ・・・そうしょうかな!」
 

こうして高価な宝石や洋服が、まんまと「月賦」で売れてゆきました。
 

それにしても、『今まで苦労してきたんだもの。自分ヘのご褒美だと思って』という言葉には、云われた熟年女性にとって、間違いなく「うぐっ」とくるものがあるんでしょうね。
 

     ◇         ◇         ◇
 

さてメーカーにとって、宝飾の販売システムは実は二重構造になっています。
 

最初のうちは宝飾フェアの販売員とメーカーの訪販の販売員がタッグを組んで、招待客に「商品」を買ってもらおうと、リップサービスを繰り広げます。そのうち、いつの間にか訪販の販売員たちにも、セールスの手が及ぶのです。
考えてみれば当然で、訪販の契約社員たちも、十分に生活に『苦労してきた』女性なのです。
 

最終日、フェアの終了後、招待客も契約社員もいなくなったところで、3日間の成績発表がメーカーの社員によって行われます。『「内部」~○○万円。「外部」~○○万円。合計、○○千万円!』
 

この場合、「外部」とは販売員が連れて来た招待客を指します。
そして「内部」とは訪販の販売員たちのことです。メーカーにとって、彼女たちを「内部」と呼んで、最初から購買対象と考えていたのをその時知りました。