17.宝飾フェア(1)

ある化粧品メーカーが、化粧品ではなく、自社ブランドのウエアとジュエリーを、お得意さまに販売する『宝飾フェア』という催しがありました。
通常、地域一番の高級ホテルの大広間を3日間貸し切り、オールご招待で行われていました。1年間を通して100回以上開催されていたのではないでしょうか。それだけバブリーに売れていたということです。
 

『宝飾フェア』における目玉は、なんといってもファッションショー。私はそのファッションショーの現場ディレクターとして、年間に20本ほど仕事を請けていました。
 

本当は「ファッションショー」と云うより小規模な「フロアショー」。なにせ、モデル3人、司会者1人、ヘアメイク1人、ディレクター1人の、小規模6人編成でしたから。1日2回の30分のショーを3日間。初日に現地に入り、最終日、ショーの終了後即帰る2泊3日の出張旅行でした。
 

ただし、3人のモデルが身につける《衣装+アクセサリー+宝石》の価格合計は、5000万円以上。ちょっとしたオートクチュール並みの豪華さです。そして現場ディレクターの最大の仕事は、お客様の目の前のショーケースから、ショーで使う宝石を、ひとつひとつ摘んでくることでした。
 

50万や100万のダイヤやルビーは安いほう。ダイヤが50個ほど散りばめられた1200万円のネックレスを初めて触った時、正直ちょっとビビリました。「こんな私に、こんなもの任せて、持ち逃げたら、誰の精?」
 

でも、慣れるものですね。たぶん銀行員と一緒です。すぐにモノの正価など気にならなくなりました。
ただひとつ気を付けたこと。それは宝石を摘んでくる時、扱いをぞんざいにしないということでした。50万には50万円の、1200万には1200万円の敬意を払って、お客様の目の前から持ち去るように心掛けました。小さなものでも高価なものには、子どもを抱えるように両手を添えました。さすがに白手袋はしませんでしたが。(今考えると、演出としてそうしたほうが良かったな。どうして誰もそのことに気付かなかったのだろう?)
 

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女5人に男がひとりの地方巡業。おいしいお酒と美味しい肴。一癖もふた癖もあるモデル連中。「ある時私は、三つ揃い・縦縞のスーツを着込み、後ろに美女をはべらせた“佐藤蛾次郎”状態でした!!」