11.タイガーマスクに会った(2)

当時、港区表参道から程近い国道246号沿いに、「新日本プロレス」の事務所ビルはありました。
 

指定の時間に、ビルの前の国道脇に車を止め待っていると、ムッチリとした筋肉質の青年と、中年のいかにもマネージャータイプのふたりが、ビルのドアを開けて車に近づいてきました。
ふたりとも多分、日本人!
 

その時、≪タイガーマスク=佐山聡≫という情報を私は持っていませんでした。
一般的にも、まだそこまでは公開情報ではなかったはず。
「んっ?」といった私の対応に、「では、出発してください」とマネージャー氏は応えました。
 

約1時間のドライブ。ふたりは後ろの席で、私が聞いても何のことか分からない話をしていました。もちろん日本語で。記憶は曖昧ですが、おそらく試合のスケジュールや、今後のイベントについて話していたと思います。
 

「そうかあ。この人がタイガーマスクかあ!」私は、車を運転しながら、じんわりと、ふたつのことに興奮していました。ひとつは、いま本物のタイガーマスクが自分の間近にいるということ。もうひとつは、「タイガーマスクの正体を知ってしまった!」ということです。
 

「あとどれくらいでイベント会場着きますか」とタイガーが私に問いかけます。(感動!)
「20分ぐらいです」と私。
「すぐそばにきたら、教えてください」「はい?」と私。
「マスクをかぶりますので」とタイガー。(再び感動!)
 

その時、私が何をどう感じたかというと・・・『秘密の共有』!!
当時若造だった私は、『ギョーカイ人として認知』されたのだと、錯覚いたしました。
 

車を専用の搬入口に着け、マスクをつけたタイガーマスクと一緒に、社員用のエレベータに乗り込みました。日本語で、マネージャーと話していたタイガーの言葉が急に英語に変わったのは、途中階から女性社員が乗り込んできたからです。
『フフフ、キミたちはギョーカイではないのだ』と心の中で、私はつぶやきました。
 

イベント会場である百貨店は早朝から列ができ始め、最終的には2000人の観客がぐるりとデパートを取り囲みました。あとで聞いた話です。
イベントは「握手会」のみ。ナゾの人・タイガーマスクは“黙々と”お仕事をこなし、迎えの車に乗って、試合会場へと去っていきました。
 

      ◇         ◇         ◇
 

何年かのち、UWFを経て、佐山聡氏は「タイガージム」を設立しました。ジム開きにご招待を受け、その時記念品として頂いた「スーパータイガー」のロゴの入った、スポーツタオルとTシャツは、今でも私の宝物です。