4.ハルミの想いで(3)

ハルミは「晴海」と書きます。そこには晴海国際展示場がありました。「幕張メッセ」や、「東京ビッグサイト」が、まだできる前のお話。
 

着替えを終えたコンパニオンはダッシュでバス停に駆けつけます。
大きなショーだと、1日に何万人という来場者があります。午後5時半過ぎの晴海展示場の人口は、ショーの関係者と来場者の居残り組で、1000人は下りません。1台のバスに100人乗っても、10数台。5分おきにバスが来たとしても、最後のほうだと1時間待ち。
 

ヒールで1日立ち尽くめの足は、悲鳴をあげています。
「早く帰りたい、でも絶対座って帰りたい!」という、相反する想いのその板挟みで、「もう、歩いて帰る!」という人と、「座れるバスが来るまで絶対乗らない!」という人分かれます。そのため、バス停には長蛇の列ができているのに、釣り革にぶら下がって帰るつもりなら、案外バスは、すいていたりするのです。
 

さて、「歩いて帰る組」に私も何度か参加したことがあります。何百人という疲れ切った若者たちが、狭い舗道を2列縦帯で、うつむきがちに銀座をめざして歩きます。あまりにひとときに、どっと舗道に繰り出したため、前の人との間隔は詰まり、40センチもない程でした。ひたすら他人のつむじを見つめて、もくもくと歩きます。
 

「ねえ、これって小学校の頃やった“小さく前にナラエ”に似てな~い?」
 

そんな声が後ろを歩くコンパニオンのグループから聞こえてきました。カチドキ橋を抜け、左手に築地の魚河岸、右手に本願寺を見ながら進むと、やがて右手に巨大な由緒ある銭湯のような建物が見えてきます。歌舞伎座です。ここまで来れば銀座1丁目の交差点はすぐそこ。約30分の下町名所めぐりが終ります。
 

—★付記★—————————————————-

展示会が終了し、コンパニオンたちが出て来ると、どこからともなく男の子たちが展示場の裏手の道路に、自慢の車をつらね集まってきます。
お目当てのコンパニオンが近づくと「おつかれさま」と、ドアを開け、やさしい笑顔で出迎えます。同輩にいい顔をしたいコンパニオンは、仲間を2~3人後ろに従えて、「いいの、いいの。気にしないで。カレって訳じゃないから」
 

ああ、すでにこの頃から“アッシー君”は晴海に登場していたのです。