【中級】タレントブッキング(4)

この項目、今回が最後です。
さて、タレントの出演を依頼する場合、まずお目当てのタレントが所属するプロダクションに電話して、双方の条件を確認し合います。

ここでは「取材」という言葉を使って解説しています。

■取材項目

┌──────────────────────────────
│【取材項目】
│1.「営業」が可能かどうか?
│2.内容を説明する
│3.スケジュールは空いているか?
│4.ギャランティーはいくらか?
│5.支払方法は?
│6.実施条件はどんなものがあるか?
│7.その他
└──────────────────────────────

上記の「取材項目」のうち、1.~3.までは前回までにお話ししました。
今回は4.~7.についてご説明します。ただこの部分は、お金に関することなので、お互いなかなかビミョーです。

「ギャランティー」「支払方法」「実施条件」は渾然一体のものなので、尋ねる順番は特に決まっていません。取材する上でも、行きつ戻りつしながら、それぞれの条件を詰めていきましょう。
「その件はどうですか?」と、先方から逆取材されるも当然ありです!

■ギャランティー・支払条件・実施条件

●ギャランティーの取材は、決定前のこの段階では、基本的には先方の「言い値」をリサーチするだけです。ただし、実施条件は細かく告げる(または聞く)べきで、それにより、いかにタレント(プロダクション)で実施条件が違うかが分かることでしょう。

●例えば歌手の場合、「カラオケ」か、「生オケ=バックバンド付き」か、により大きく違います。バンド人件費と楽器リース代が省かれるからです。ただし、一流の歌手は、普通「カラオケ」の仕事はハナから請けはしないでしょう。

●また「出演する側」にとって“美味しい仕事”の時は、「発注する側」はギャランティーを抑えることが可能です。
例えば、≪新聞社主催の『○○シンポジウム』で、パネルディスカッションのパネラーのひとりとして出演する場合≫などがそれにあたります。

●ちょっと盛りを過ぎた中堅の役者さんが、新たな仕事の方向性を見出そうとしているとき、「文化人」の香りのする仕事には、きっと飛びつくはずです。
「謝礼は○○新聞社の既定により、これだけ(○○万円)となっておりますが、いかがでしょうか?」と云われれば、「否」とは云わないはずです。通常の半値くらいで買えることもありますよ。

●また、支払い条件によっても、ギャランティーは微妙に変化します。
「前払い」や、「取っ払い(当日全額支払いのこと)」を約束できるなら、多少安くすることもできるはず。
ただし、相手のプロダクションと初取引だと、はじめから「半金前払い・残金当日払い」を条件にしてくる可能性はありますが。

●どちらにしても、発注する側から云うと、「入金は早く、支払いは遅く」というのは当然で、せめて入金後に支払いを立てたいと考えるものです。ただし、取材の段階ではこちらの要望はあまり出さず、相手の話を聞くにとどめておきましょう。

真の「攻防」は“決定後”です!

●さて、自分の側の「実施条件」は、前回書いた6W1Hで相手に伝えるとして、相手側からの「実施条件」にはどんなものがあるでしょう?実際は「出演料」以外に掛かる費用がわんさと出てきます。先方はそれを実施条件として出してくるでしょう。

■事務所側の実施条件

1.あご・足・枕:
あまり好きな言葉じゃないのですが、「芸人」のの世界だけに、昔から通用している符牒のようなもの。「あご=食事代」「足=交通費」「枕=宿泊費」は、主催者負担という前提で、仕事が決まっていきます。

●これが案外、コワイ!ひとりの演歌歌手にお付が20人(!)というのが当たり前の世界。20人の内訳は、マネージャー、バックバンド、音響・照明のオペレータ、メイク、衣装、などのご一行様です。

「あご」は仕方がないとしても、「足」が大変です。地方の場合、飛行機代が結構な金額になります。しかも「スーパーシート」をなぜか4人分用意するよう、要求してきます。(本人と、マネージャー。あとは誰?!)
「枕」も、それなりのクラスのホテルを用意しなければなりません。

2.楽器レンタル費:
ピアノは「現地手配の調律費持ち」は仕方がない気もしますが、それ以外の手持ち楽器や、アンプ類の手配を云ってくることがあります。

3.音響機材、照明機材の手配:
通常、市民会館やホテルにある音響機材ではショーは行えません。別途用意することになるでしょう。
照明機材は、市民会館レベルならば、一通りは揃っているはず。でも追加機材を云ってくる場合もあります。

4.楽器車の運搬費負担:
楽器の他、衣装や道具を積んだ11トンを東京から出すという場合、九州や北海道だと50万が相場です。

●今から20年ほど前、私がこの仕事を始めてあまりたっていない頃、知り合いの、ギョーカイとはまったく関係のない友人に、『ジュリー(沢田研二)のギャラは、日立てで500万だぜ!』と話したところ、『そんなバカな話はない!ウソを云うな!』と、顔を真っ赤にして怒られたことがあります。

●彼の怒りは、『1日500万だと、週に二日働いただけで年間5億じゃないか!』というものだったのでしょう。
その理屈はもっともですが、今まで4回に渡って書いてきたとおり、出演料がすべてタレントの収入になる訳ではありません。

●かつて美空ひばりさんは、年間300近いステージをこなしていたそうです。ほぼ毎日!時には1日2ステージも。

ひばりさんはラーメンが大好物で、到着してすぐ食べれるよう、スタッフが気を使い、頃合を見計らって、楽屋に出前を取っていたそうです。楽屋入りが遅れるとラーメンがのびるので、5分おきに注文の電話をしていたとか。そのため楽屋にはドンブリが列を成していたという話です。
ドンブリは毎回、片付けたでしょうが・・・

●美空ひばりさんのスタッフは、ゆうに50人を越えていたはず。
その50人の生活を背負って、日々唄っていたというのは、ちょっとうがち過ぎの意見でしょうか?