【中級】照明で光と闇を演出する

■NO.1消灯施設・東京タワー

●2004年の6月20日のことです。
ちょっと前のお話で恐縮ですが、東京タワーを建物の背景に背負う、東京プリンスホテル(三田)の「サンフラワーガーデンチャペル」で、『100万人のキャンドルナイト・東京八百夜灯』というイベントが開催されました。

●主催は東京八百夜灯実行委員会。環境省がNGO団体とパートナーシップを組んだこのイベントは、「Co2削減・百万人の輪」キャンペーンの一環として開催されました。全国の市民、施設にも呼びかけ、札幌時計台・盛岡市一帯・六本木ヒルズ・原爆ドーム・首里城などは、同日同時間に、実際に『消灯』に協力したそうです。

●「電気を消してスローな夜を過ごしましょう」をスローガンに、節電・環境保全などスローライフへの興味を喚起させる、というのがイベント趣旨で、“国内でもっともシンボリックな「消灯施設・東京タワー」”の照明を、カウントダウンのあと、2時間消したそうです。

●もちろん「サンフラワーガーデンチャペル」の明かりも消され、ステージ上にキャンドル彩られた2mのミニチュア東京タワーが飾られました。
モーニング娘。の限定ユニット「エコモニ。」も出演し、イベントに色を添えました。

●私は見そこなったのですが、参加しかったなあ、このイベント!
「エコモニ。」ではありません。自分のカウントダウンで、東京タワーの明かりが消える瞬間を、です。どんなスーパーイリュージョンだって、こればかりは不可能ですから。残念!!

■家庭での光の演出

●子供のいる家庭で、誕生日やクリスマス会で、ケーキと一緒にローソクの火を灯すというのは定着しています。天井の明かりを消して、ローソクに火を点け、「ハッピーバースデー」や「清しこの夜」を歌って、ローソクを吹き消しすという儀式は、なぜか子供のお気に入りです。

●アロマオイルを温めたり、アロマ成分の入ったキャンドルに火を灯す、というのも一頃流行りました。ポッと灯ったローソクの明かりには、確かに癒し効果があるようです。

●仏事や神事がらみでもローソクは灯されます。ただ、核家族化の精で、家庭から仏壇や神棚が消えていっている現在、それを経験する機会は薄れていますが。あとは結婚式の「キャンドルサービス」ぐらいでしょうか・・・

●ローソクでなくても、ランプシェードの電球の暖かい明かりも、光の演出として秀逸です。部屋全体を照らす明るいだけの蛍光灯と違って、「影」を作り出してくれる電球の光は、あたかも洞窟で暮らした先祖の思いを、追体験させてくれるようです。

●こうしてみてくると、明りにはどこか神秘的で、そこに集う人の心をひとつにする“特殊な力”があることが分かりますね。そしてポイントは、「光と影」を演出すること。

■イベントでの明かりの演出

●さて、本題です。
イベントにおける明かりの重要性は、云うまでもありません。
ナチスドイツのヒットラーは小男でしたが、自分を偉大な指導者として演出するため、夕暮れから夜にかけての演説会で、照明効果をフルに使い切りました。

●その時ヒットラーは、日暮れ前から始めた演説会で、だんだんとテンションを上げていき、やがて夕陽を背中から浴びた彼の姿は、神々しくさえ見えたに違いありません。陽がとっぷりと落ちた時、ヒットラーには強烈なスポットライトが四方から当たっていました。この演説会は大成功を収めました。

●テレビの歌番組でもよく使う手法ですが、前からの明かりを下げ、背中から強烈な照明を当てることで、その歌手を際立たせることを「バックサスを当てる」と云います。

●照明効果の持つ“特殊な力”を知らないと、とかく対象物に、前面から強い光力のライトを当て、「これでよし!」と考えがちです。光は、横から、斜めから、後ろから当てることにより、その可能性が大きくUPします。

●イベントを行うとき、必須のアイテムは「ステージ」と「音響機材」と、そして「照明装置」です。これらがそろって、初めて出演者が引き立ちます。
特に照明の明るさが足りないと、観衆の視点は定まらず、注意が散漫になり、視線は宙を泳ぐことになります。そうなると、イベントへの評価が下がります。

●もうひとつ。
照明効果には「闇」を演出することも含まれます。芝居では「暗転」が多様されますが、上手な演出家の芝居は、「暗転」の中にもストーリーを込めるものです。

●最初に書いた『100万人のキャンドルナイト』ですが、照明に関しては上手くいかなかったようです。会場がホテル脇のため、客室の明かりが漏れたり、安全確保のため、会場の明りをすべて落とすことができなかったからです。
せっかく東京タワーの照明を消したのに、「電気を消して真っ暗闇」という演出にはならず、今後に課題を残しました。